修学旅行といえば、昔から生徒たちの大喜びする、そして記念にもなる一大イベントでした。日本が貧しかった時代には、旅行らしい旅行は修学旅行が初めてという生徒も珍しくなかったのです。それでさえ、家庭の経済的な事情から参加ができず、悔しい思いをした生徒までいました。 ところが、近年は、逆に修学旅行に行きたくない、苦痛だと考える生徒が増えているようです。 ひとつには、旅行そのものは家族や親戚と何度も経験していて、ともすれば行き先の日光や京都も何度も行ったことがある場合もあり、旅行先に対する新鮮さや興味が失われていることがあげられます。 しかし、修学旅行を苦痛だと感じる生徒の心の闇はもっと深いのです。集団生活そのものに恐れを感じているケースも多いのではないでしょうか。特に、思春期の生徒たちにとって、体を全く隠すことなく入る入浴時間は、プール以上に苦痛で、人により個人差のある発毛部位なども気になるようです。そもそも、銭湯や温泉大浴場などに行った経験が少ない生徒は、大事なところを隠すべきかどうかも分からず、冷や冷やすることも。 そしてまた、クラスにこれといって仲の良い友達がいない孤立した生徒にとっては、 自由時間の多い修学旅行は間が持たず、苦痛が大きいのも仕方がないことです。バスでとなりの席に座る友達もいなければ、班決めのたびに苦労し、弁当は一人で食べる……といった、とても親には見せられない惨めな数日間を送ることになります。これでは、修学旅行の日が近付いてくるのが憂鬱になってしまいますね。