ところが、良く考えると、実はこれではすまないのです。
なぜならば、どんな商品やサービスにも、製造や販売に人件費がかかっているからです。労働者の生活費も消費増税によって増えてしまいますから、これまで月給20万円でギリギリの生活していた人は、20万円では生活できなくなります。よって、給料も20万円よりアップせねばならず、人件費も増えるのです。
給料がどのくらい増えねばならないかというと、物価の上昇と同じぐらい増えないと困るわけですから、この上昇率を、ここでは未知数の「χ」と仮定しましょう。
また、全産業で、価格の中に占める最終的な人件費の割合がどのぐらいかは統計を調査する必要がありますが、ここでは仮に「p」と表しましょう。
すると、純粋に消費税増税分に消える分が、これまでの物価の105分の3です。それに加えて、人件費の上昇による上乗せが、χ×pです。これを数式にするならば、
物価上昇率=3/105+人件費上昇率×p
となりますね。ところで、先ほど、物価上昇率と同じだけ生活費が上昇して、人件費も上がると仮定したので、前述のように「物価上昇率=人件費上昇率=χ」になりますから、次のように書き換えられます。
χ=3/105+pχ
この方程式の解は、
χ=3÷(105×(1-p))
となります。pの数値をいくつに設定すれば良いのかは難しいですが、例えば飲食業は、3割原価、3割家賃、3割人件費で1割が粗利益と言われますので、それを参考にp=0.3と考えてみましょう。すると、
χ=0.0408となります。つまり、物価も給料も約4.08%上がることで均衡することとなります。この例で言っても、実際には「原価」の食材費の中にも人件費がありますし(農家の収入や、輸送に関わる運転手の賃金など)、「家賃」も大家やビル管理業者の人件費が含まれますから、0.3よりは多いことは確実でしょう。そう考えると、均衡できる値上げ幅は4%どころではすまなく、5%も10%もあり得ます。