ビジネスマナーという名の下に、てんでおかしな説がまかり通っていますので、注意が必要です。この一因には、ビジネスマナー講習や、マナー講師など専門家を名乗る人の存在や、書籍などの存在があります。要するに、ビジネスマナーそれ自体が、産業だということです。 ですから、事の本質を見るには、ビジネスマナーの中にはいかにもくだらないものや、無用な標準化を浸透させてしまう良くないものが紛れ込んでいると見るべきなのです。 名刺の渡し方一つでも、そうです。目下の者が名乗り出て名刺を渡し、次に受け取ったら「ちょうだいいたします」とお辞儀をするなど、別に誰が決めたマナーでもありません。実際の場では、殆どのケースで同時交換をしているでしょうし、あまり気にする必要はないでしょう。そんなことよりも、語尾まではっきりと聞き取りやすい声で名乗るというような当たり前のことの方がよほど大切なのです。 ましてや、名刺は偉い人のを高い位置に 置き……とか、座っている順番に置き……、とか、すぐにしまうな……、とか、どうでも良いことです。そんなことよりも、会議の内容をしっかりと聞き、また、狭い机の上で名詞をトランプのように並べて場所をとり、ひんしゅくを買わないようにすることの方がよほど大切ですね。