カツラを着用している人にとって、自分のカツラがばれているのかどうかを知るのは案外難しいことです。他人からすれば、わざわざ「それ、カツラだよね」と指摘する必要性は全くなく、自然な会話で、そのカツラを話題にすることなどあまりないからです。 そうするうちに、カツラのことはだんだんタブーになっていきます。「店長がカツラなのは、みんな知ってるけど、でも言えないよね」的な状態です。こうなってくると、次第にタブーどころか、はれ物に触るようになってきます。本人にカツラと指摘しないだけでなく、もはやその人が居るところで薄毛や育毛関係の話題は全て避けるようになるのです。 そういう緊張感を破るかのように、部外者が平気でカツラを指摘することがあります。正に、部外者だからできることです。例えば、お客さんが苦情を言ってきて、「店長を出せ!」と怒っているとします。そこに店長が出ていくと、「ふざけんなよてめえ、変なカツラかぶりやがって」と、それはもうみんなが言えなかったことをサラリと言ってのけるかも知れないのです。 しかし、利害の関係ない部外者だからこそ指摘ができ、 タブーを打ち破ることができるのは素晴らしいことです。わざわざ部外者に頼んでこういう指摘をみんなの前でしてもらい、タブーをタブーでなくすという荒技も、場合によっては検討する価値があるかも知れません。